癒しの園芸〜PART3― スクーリングリポート
テーマ<手軽に楽しむポケットりんご(小玉りんご)>
日 時: 2004年11月7日(日)
場 所: 農大 厚木校舎 
講 師: 宮田 正信 先生
プロフィール:東京農業大学農学部講師
専門は果物作り、大学では人間植物関係学の社会園芸を専門、研究。 園芸ボランティア、園芸療法、地域振興など活動。“せたがやeカレッジ”では「癒しの園芸講座」を担当、農水省の食育プロジェクトのコンテンツ作りにも携わる
参加者:10名

スクーリング会場に入るとりんごの香りに包まれました。既にテーブルにはいろいろな種類のりんごが置かれています。

参加者がほぼ集まったことを確認後、 先生より今日のテーマの主旨の説明がありました。
今回のテーマは皆さんにできるだけりんごについて広く知ってもらうこと、楽しんでもらうこと、気軽に食べて健康になりましょうということ。そして今日は勉強会と試食会にしたいと思います。まずは小玉りんごを沢山試食して頂きます。

さきほどのテーブルから夫々好きな小玉りんごを参加者全員が1個ずつ取って丸齧りするように指示がありました。
真剣に吟味です。
一方で、ふじの生産に至るまでの歴史や、中国、韓国でのふじの大量生産の状況等の講義を受けながら私達参加者はせっせっとりんごを食べることに専念しましたが...。
講 義
ふじの生産に至るまでの生産現場での思考錯誤
第2次世界大戦後から昭和40年代頃までは生産現場では印度、祝、国光、旭等を中心にりんごの増産、結果、生産過剰と味があまり良くなっかったせいで山、川に捨てる現象が起こり山川市場と呼ばれる時期があった。
もっと美味しいりんごの生産を目指して昭和40年代後半からデリシャス系をアメリカから導入。
昭和50、60年代にはスターキング、デリシャス、ふじが生産の35%を占める。
スターキング、デリシャス系は香りもよく美味ではあるが呼吸活性が活発で老化が早い。

スターキング、デリシャス系がためやすい“ミツ”について
果実は葉の光合成から
ソルビトール → 澱粉 → 果糖 → 蔗糖 → ぶどう糖 と変化して
美味しい果実になる

ソルビトールの形のままで果実の中にたまったものがミツ、あるいはミツ症と云われ完熟のサインでもあるが、一つの生理障害でもあるスターキングは一時は生産の35%を占めたが完熟時期を過ぎると急激に日持ち(棚もち)が悪くなるということで、美味しくて日持ちの良いふじの生産が中心となってゆく。

ふじの各国の生産状況
  韓国:りんご生産の70%がふじ
  中国:   “   50%がふじ
  日本:   “   50% “
      今や中国からは世界各国に安いふじが輸出されている

りんご産業の展望と小玉りんごの需要の経緯
 ここ20年ほどで若い人たちのりんごの消費が減少
 生産現場では
  山川産業  ⇒⇒デリシャス ⇒⇒生産量の増加 ⇒⇒競争化 ⇒⇒⇒価格の低迷
  ⇒⇒高品質化 ⇒⇒価格の引き上げ ⇒⇒大玉・外観・美味 ⇒⇒⇒バブル崩壊
  ⇒⇒高いイメージの定着 ⇒⇒若い人のりんご離れ ⇒⇒⇒小玉りんごに着眼
 

地元生産者と高校生の取り組み
 ポケットりんご “ふくちゃん” の商標の登録
   こうとく、アンビシャスの生産
   こうとくはホテルや催事場などに提供した時にかなりの好評を得ているので小玉りんごの販売に自信を持つ。

カラー、熟度、糖度センサーの存在
 生産者は味のばらつきを避けるため(消費者の満足の為)にセンサーを使用  しかしこの導入には30〜50億円の大金を投入、補助金はあるものの維持費は生産者側の負担となる。

●流通システム
 生産者 → (農協) →(荷受会社) →競売 →(卸業者) →小売業 →消費者

  上記の流れので小売業者は損をしないシステム   リスクは生産者か( )内のいずれかの業者がとる
●産地直売のシステム
 生産者から小売業者に直接生産物が流れるが帳簿上では常に( )内の業者が存在する。
などなど講義が続きました。

本格的にりんごの試食
 まづは小玉りんご、ふじ、サンふじの有袋、無袋
 こうとく、アンビシャス、王林、紅玉、北斗等を小分けにしながら
次々と試食
最後の方はさすがにお腹が膨れてしまい味の違いが曖昧になってしまいました。
紙の上に食べかけの夫々のりんごの名前と味の感想を書いている人がおりましたがこれは後々に先生の質問にとても役立つことに。

試食しながら先生のりんご産地の話
 十和田の西側の山麓の平田というりんご産地は傾斜地、陽当たりのよさ、水はけのよさの条件で美味しいりんごが出来る。
 水はけがよすぎると大玉のりんごは出来ずに小玉になるので小玉りんごの産地としては適している。
 平地の水田転化の産地では大きく育つが甘みや旨み不足になる

一通りの種類のりんごをたベ終わった頃に先生より試食した小玉りんごに関しての意見や見解、提案、の要請があり次のような参加者からの声がありました。

参加者の小玉りんごに関しての感想と提案
◇供給量が少ないので販売できないのでは?
◇ネット販売をする(生産者側に代金決済のリスクがあるのでは?)
◇もっと小さくして、見た時に思わず ”可愛いっ” と手に取ってみたくなるようなりんご(180から200グラム)だったら。
◇食感がシャキシャキして美味しかったのはアンビシャスです。価格は1個\100位がよい
◇無袋のサンふじが美味しかったです。知る限りではりんごに力を入れているお店が少ないのでもっとアピールしないと。自分もみかんとかはよく食べますがりんごは あまり食べません。丸齧りの発想はありませんでした。 
◇カナダに行った時、コーヒーショップとかフードコートとかで気軽に買って食べられるりんごがあり、皮も柔らかく 食感が違っていた。
◇味的には北斗、アンビシャス、ふじです。丸ごと食べるとすると柔らかかったのでふじ、固いのは皮を剥くので面倒臭いです。丸齧りできる柔らかさであれば食べると思います。

(先生)幾ら位がよいですか?
◇\100~\50くらいだったら良いと思います。
◇色々種類があって選べればよい。
◇健康志向の側面からの販売促進、子供の頃から丸齧りさせるようにすれば  顎の発達によい。
◇丸齧りは農薬の問題もあるので難しい、価格については余り心配はないのでは?  良い物であればいくらでも価格は出せると思います。ネットを使ってまづは商品を知ってもらう。
◇農薬についての納得のいく説明が必要。
  ?若い女性は丸齧りは口紅がとれるので無理でしょう?
  ?家のお嫁さんはりんごよりキーウイを好む。

などなど終始和やかな雰囲気ではありましたが真剣な意見や提案がありました。

最後に先生から
“りんごだけでなく野菜や園芸を、そしてもっと土に親しむ日常を楽しむように”
との言葉で今日のスクーリングは終了致しました。

※スクーリング後記※
流通経路から価格設定、りんごを有袋にした場合の生産者の労力等、内容の詰まった講義で久しぶりに大学時代を思い出しました。 外国から来た人々が異口同音に日本のりんごはとても立派で芸術品みたいで気軽に買ったり食べたり出来ないと言いますが、生産者側の研究と努力、労力を再認識させられる講義でもありました。 又、海外旅行や海外から帰って来た人が日本は立派な大きなりんごばかりで小さいりんごが無いとの声も度々耳にしました。 店頭に小玉りんごが大玉りんごと一緒に並ぶ日がとても楽しみです。 余談ですが、持ち帰りの10種類のりんごはとても美味でした。

スクーリングレポート 角田廣子
写真提供 中村建治